D−6
「お止めすることが出来なかった…。私は恐ろしい。あんなご様子の王を初めて見ます。まるで御正気をなくされたよう…。」 話をずっと聞いていたナエラも、青ざめながら尋ねた。 「それでは、王は…この内奥に繋がる廊下をお下りになっていったというの?だってこの奥には…新しく王のお体になる胚胎した肉花が…。そんな、まさか…」 驚愕のあまりうろたえるナエラに向かって、ニエナは諦めの嘆息を漏らして言った。 「私達ではもう…、どうすることも出来ないわ。はやく、このことを大姉公さまと大妹公さまに…。あの方々に止めていただくしかもう手立てがないわ。さあ、早くしないと間に合わなくなる!」 「ええ、わかった!」 もはや動くことの出来ないニエナをその場に残し、ナエラは白くてたおやかな肢体が裾から露わになるのもかまわず、廊下を上へと走っていった。だが、彼女が姉公や妹公を連れてくるよりも早く、下層から悲鳴と泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
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