D−3

 女は震えながら、先程見たこと聞いたことを語った。同役は、それで、と先を促した。
「王はなんと言ったのです。その、凶星を御覧になったあと、なんと!」
 側仕女のニエナは思い出すのも恐ろしい、といった顔で耳をふさいだ。同役の女がニエナの肩を揺らす。彼女の胸にも戦慄が芽生え始めていた。
 間近になった小さな唇が、微かにわななくのがよく見える。そして、その唇が語ることには、もう、終わる、と。
「…この国は滅ぶと。我々は一人を残して死に絶えるのだ、と。」
 その言葉を耳にしたとき、何人もの側仕えの女が恐ろしさの余り悲鳴を上げて失神した。その予言めいた言葉は、しかし、必ず真実となるであろう事を、この国の国民なら誰しもが知っていたからだ。
 これを聞いた同役の女、ナエラも目の前が真っ暗になるのを感じた。そんな…馬鹿な…。普段は気の強い彼女も、この言葉には冷静ではいられなかった。
「神に愛でられたこの土地が、神に最も近しいこの国が滅ぶというの!?一体何故!!」
 涙をようやっと抑えたニエナは、気を張りながらゆっくりと答えた。
「ええ、ええ。王は確かにそう言われたわ。でも、何故滅びるのかまでは仰られなかった…。それ以上聴きたい人はあの場にいなかったでしょうから。」
でも、…と。彼女は言葉を続けた。
「本当に恐ろしいのはそれからなの。」


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