Cー8
悪竜のすみかは西の岩頸のなかにありました。マグマただよう焦原に、大きなインデュースは臆することもなく突き進み、竜の砦にたどりつきました。 眠る竜の横をすり抜け、大きなインデュースは姫の姿を探しました。洞穴の一番奥まったところにひっそりと、姫はその身を横たえていました。硫煙と熱気でだいぶ弱っているようでしたが、守りの剣のおかげでどこにもけがはありません。 大きなインデュースは高らかにのたまいました。
「悪心の王にそそのかされ、いくどとなく雷にうたれようとも、今貴女の許におれる自分を誇りに思う。」 その声に姫君は目を覚まし、彼の姿を見て目を見張りました。 「貴方はいつぞやの旅人さん、本当にここまできてくれたのね。でも逃げた方がいいわ、だってあの竜には剣も槍もきかないんですもの。」
たしかに竜は黒光りする堅くて分厚い鱗に覆われ、いかなる刃物をも通さないようでした。 しかし大きなインデュースは平気でした。 「大丈夫、それは私も同じです。それに私には、どんなに固い盾や鎧でも、うち砕く剣があるのです。」 「それでもいけませんわ。あの竜の首はうちおとしてもすぐに生えてくるし、鱗の中身は蛇やムカデやサソリなどの毒虫でいっぱいなのですよ。」 姫君は今にも泣きそうでした。 大きなインデュースは姫の肩をしっかりと抱き、姫の瞳を見ていいました。 「大丈夫、私を信じてください。貴女を必ず国許へ送りとどけて見せます。」 大きなインデュースはすっくと立ち上がりました。姫を抱えて竜の鼻先をすり抜け、高台へと運んだ後、岩頸に大きな雷を落としたのです。 塔のような岩は一瞬で砕け、マグマの海に沈みました。灰塵が雲のように立ちのぼったと思うとすぐに火がついて、煙焔があたりをおおいつくしました。
そのとき真っ黒い巨体が上へと跳ね上がったのです。あの竜でした。 竜は目を真っ赤に染めて、怒りをあらわにし、大きな羽をはばたかせています。 大きなインデュースは竜に向かって、再三、雷を投げつけました。竜はそのたびにもだえ苦しんで、炎や硫黄の煙を吐きながら、ついに焦原に墜落しました。大きなインデュースはすかさず竜のもとへ駈け寄り、竜の頭へ自らの剣を突き立てました。 そして竜の脳から神経へと、強烈な電流を流し、なかの毒虫を焼きつくしたのでした。
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