Cー6
東の礁海はつねに雷光が飛び交う、恐ろしいところです。小さなインデュースは武器もなく、丸腰でその恐ろしい海を渡りました。 しかし胸のうちには、この海の雷にも劣らぬ、信念という剣が輝いていたことを、忘れてはいけません。 雷は容赦なく小さなインデュースをさいなみ、小さなインデュースは雷に打たれて、4回死にました。 しかしそのたびに雷撃よりも強い意志によって、息を吹き返し、吹きすさぶ風とあれる波とに闘いながら先へ進みました。 やがて小高い岩礁が波間から姿を現し、小さなインデュースはその頂上に立ちました。 しかし、その丘の上には剣も、なにもありません。 小さなインデュースはそこでやっと、王にたばかられたことに気づきました。 インデュースの激しい怒りとともに、これまでで一番に大きくて美しい雷が、丘の上に落ちました。
光のなかで《絶え間ざる意志の言葉》をきいた彼は、五度目の息を吹き返しました。 それは、もはや小さなインデュースではありませんでした。 暗雲立ちこめる空はさっと左右にひらき、荒れていた海原は嘘のように静まりかえりました。 雷丘に立つ彼のその姿は、まるで丘に突き刺さる剣のようでした。
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