Cー4
山を下りたあとも、小さいインデュースは南へと向かい続けました。 その途中には沼地や深い森が広がり、獣たちの住処となっています。 そこに住む人間はみな臆病で、隠れるようにおどおどと暮らしていました。 インデュースは、ここは自分の住むところではないと考え、先へ進みました。 さらに南へ向かいますと、小さな砂漠が広がっていました。 そこは海に隣接して風通しがよく、たくさんの商品や金に囲まれ、人々は裕福に暮らしていました。 しかし、そこに住む人々はみな傲慢で、小さなインデュースのいでたちをみて笑い者にしました。 だから小さなインデュースは、ここも自分の住むところではないと考え、先へ進みました。 さいごに小さなインデュースは広い広い平原にたどり着きました。 緑の草が生い茂り、風はさわやかにかけてゆきます。 「なんてすてきなところだろう。」 小さなインデュースは足を止めて景色に見入りました。 するとそこへ白いおおいをかけた駕篭をかつぐ行列が通りかかりました。 「そこをゆく担ぎ手さん。 このお駕篭はどこへゆくんだい。」 小さなインデュースがたずねますと、 駕篭の担ぎ手は悲しげにこたえました。 「この駕篭は竜の住まう砦へ運ぶのです。 この駕篭には我が国の姫様が乗っておられるのです。」 小さなインデュースは驚いて白いおおいを見つめました。 「一体なぜ姫君をそんなところへ運ぶんだ。」 「王様のご命令なのです。竜は姫様をさしだせば、この国に悪さをしないと王に約束したのです。」 小さなインデュースは憤然としていいました。 「そんなばかげた約束はまったく守るに値しない。悪い竜ならやっつけてしまえばよいのだ。」 その言葉に担ぎ手はおののいて黙ってしまいました。 「勇敢な旅人さん。」 今度は白いおおいの中から声がしました。 「私のことを心配してくださってありがとう。でも義父が決めたことですもの。私が拒む法はないわ。」 おおいがすっと持ち上がり、美しい姫君が顔をのぞかせました。 それをみた小さなインデュースは決意をもって、姫に白金の小刀を差し出しました。 「これは守りの剣です。これさえあれば竜といえども、そうそう貴女に手出しはできないはずです。」 姫は剣を受け取り、涙を流していいました。 「ありがとう。最期にあなたみたいな人に会えてよかったわ。」 行列はそのまま去ってゆきました。
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