Cー2
城を出て、町をでて、国を出て、 吹雪の雪原を100日かけて歩きました。 そこへ悪魔が現れて、小さなインデュースの後をずっとついてきました。 悪魔は雪原を通る者を惑わせて、二度とこの極寒の地から出られないようにするのが仕事です。 小さなインデュースも例外ではありませんでした。 「おちびちゃん。おちびちゃん。どこへいくの。」 悪魔はおどけたような甘い口調で話しかけます。 常に背後にいるのでその姿を見ることはできません。 小さなインデュースは答えました。 「南さ。ずっと南へ行って体が小さくても馬鹿にされないところを探すのさ。」 「そりゃあ大変。大変だよ、おちびちゃん。 だって、お前さんが今、向かってるのは東だからさ。」 「そんなことはないさ。だってまっすぐ南に向かっているもの。」 小さなインデュースは動じません。 吹雪はますます激しくなります。 「ほらほら風が強くなってきた。小さな体がよろよろしてるじゃあないか。」 悪魔はケタケタ笑います。 「おちびちゃん。おちびちゃん。どこへいくの。」 「南さ。ずっと南へ行って体が小さくても馬鹿にされないところを探すのさ。」
「そりゃあ大変。大変だよ、おちびちゃん。 だって、お前さんが今、向かっているのは西だからさ。」 「そんなことはないさ。だって、ずっとまっすぐ南に向かっているもの。」
小さなインデュースはある限りの力を振り絞ってまっすぐ歩きました。 大きな雪がますますゆくてを阻みます。 「ほらほら雪も多くなってきた。前がちっとも見えないじゃあないか。」 悪魔は踊り狂いながらケタケタ笑います。 「おちびちゃん。おちびちゃん。一体どこへいくのさ。」 「南さ。ずっと南へ行って体が小さくても馬鹿にされないところを探すのさ。」 「そりゃあ大変。大変だよ、おちびちゃん。 だって、お前さんが今、向かっているのは北だからさ。」 「そんなことはないさ。だって、ずっとずっとまっすぐ南に向かっているもの…」 小さなインデュースは自分の心を信じて進み続けました。 …やがて吹雪はやみ、 太陽が雲の間から顔をのぞかせました。 悪魔は暖かさを嫌ってそれ以上ついてきません。 「ちぇ、ちぇ。おもしろくない。 お前さんなんか、どこへなりともいっちまいな!」 小さなインデュースは顔を上げてまっすぐ進みました。
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