Aー10
サムが目を覚ますと、もとの荒涼とした大地だった。 嵐は止み、太陽が顔を出す。辺りには先程まで降っていたらしい雹が散らばっていた。
――夢だったのだろうか…。
そう思ったとき、手に小さな布袋を握っていることに気がついた。急いで中身を確かめると、そこには種らしい粒が三つ入っていた。
サムは急速に愛しい娘の顔を思い出し、沈んだ気持ちになった。彼女に触れてから、彼女の容態は急速に悪くなっていった…。自分が彼女を汚したことで、彼女の命を奪ったのだとしたら…!
「俺が…帰りたいなんて思わなければ…!」
男は嗚咽した。失った者の重さ、犯したことへの罪。全ての元凶である自分が許せない。
褐色の髪をかき乱し、腹を折って地に平伏し、彼は犯した罪を全て懺悔した。
俺は嘘をついた。君は尋ねたことに対して全て答えてくれた。俺は君を殺した…。
「…サーラ。俺はどうしたらいい?どうしたら、お前に謝れる…?」
『面を上げなさい。』
彼はハッとした。
『貴男は自分の国へ帰りたいと思っている。しかし、それは叶いません。』
ダナエの声が、頭の中で鐘のように響く。
『貴男はここで、種を育てるのです。そして一生秘密を守り続けて死ぬのです。それが、サーラにできる唯一の謝罪です。』
鐘の音が遠のいてゆく。サムは伏していた顔を上げた。
「――ああ、わかったよ…。」
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