Aー5
「女王様に謁見なさいませ。何か助言をして下さいましょうから。」
女はサムを外へ連れて出た。野山をひとつ越えると、一帯を見渡せるところに行き着いた。
一面が草の緑で、諸処に白い岩がある。おそらく先程の石英であろう。樹の姿はやはりない。
――何故、この国には木がないのか。
「この世界には、木は一本しかありません。」
――それは何故。
「それで充分だからです。」
サムは、女の言葉の真意をとりかねた。しかし、この国がすでに自分の常識の範疇には治まらないことに、気づき始めていた。
――太陽は、見えないのか。
「見えておりますよ。あそこに何億と。」
女は天上を指さした。サムは真っ白ともいえるその空を見上げ、目を凝らした。
すると、光の固まりだと思っていたその天上が、一つ一つの星の、大きな集まりだということに気がついた。
「何故星があんなに明るいんです!宙が。全て覆われてしまうほどに!」
「それは、この国がよほど星群に近いからでありましょう。」
女はにこりと笑んだ。サムは絶句した。
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