7−7
ひとしきり、イウギの涙をなだめたセルイはその後、悉くイウギの提案に従った。全く回復の見えてこない体調に見切りをつけて、イウギはやはり二人で村へ向かうことを提案した。動けない彼の体はイウギが負ぶっていくことにした。 荷物や重たい装身具は繁みに隠して、イウギはセルイの片腕を担いだ。続いてセルイが、イウギの方へ体重をかける。その勢いで何とか二人は立ち上がったものの、街道側へとよろよろと倒れそうになった。それを必死に踏ん張って耐え、イウギはそのまま村の方へと足を進めた。 もとよりイウギの小さな体でセルイの全体重を支えきれるものではないが、それでも子供は気力を張って彼を運んでいった。セルイも痛みと倦(う)みと、闘いながら必死に意識を保っていた。そうすることで子供に負担をかけないように努めていた。 星明かりが一瞬一瞬街道の土を照らす。が、それもすぐに雲の波間にかき消されてしまうのだった。そして、いつしかそれさえもなくなって、あたりは真の闇に包まれた。 明かりもないまま、二人は夜の道を歩き続けた。 ・・・一体何時間そうしていたことだろう。闇は相変わらず広く、深く、先に立ち塞がって出口は見えなかった。イウギの荒い息づかいだけが聞こえる。細い肢体が、ぐらぐらと揺れるたびにセルイは目を覚ます心地だった。青年は今しも「これ以上無理をしないで」といいそうになったが、子供が耐えきれなくなって自分をおっぽりだすまでは黙っていようと思った。そして、そんなことをイウギがしないであろう事も分かっていた。 夜の湿気は執拗に二人を囲い込んでゆき、イウギの歩調(ペース)も落ちていく一方だった。それでも少年は休もうともせず前へ進み続けた。彼にとっても、この闇は永遠のように感じられたことだろう。 二人は会話もなく、幾果てとも知らぬ夜の海を漕いでいた。…
辛く苦しい、海路の果ては、明るい港の光だった。雑木林の木々の間から漏れる静かな灯りは、確かに町のものだった。それが段々と大きくなり、イウギは目を見開いた。二人はオリアタの街を出て以来初めての、まともな宿場町に出会えたのだ。
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