2−6
目が覚めても、相変わらず世界は彼に無関心であった。
山にかかった霞が反射して、朝の光を白くする。それすら、今は疎ましい。 少年は、けだるい体を起こして、寝台に座りなおした。つま先が床につかず、足がぶらぶらする。彼はその拠り所のなさを、じんわり噛み締めた。 思考はほとんど停止していた。夜のときとは、ずいぶんな違いようだが、空虚な心に変わりはなかった。 結句、答えは出ずじまいだった。やはり、自分の時間はあの夜から止まっている。時間を取り戻すには、あの夜に、あの場所に帰るしかない。
イウギが起きてから、一時間もたたないうちにセルイが帰ってきた。いつの間に出かけたのだか、イウギはまったく気づかなかったが、どこに行っていたのか、聞くつもりもないので黙っていた。すると、青年はまた優しい声で語りかけてきた。 だが少年に、その優しさに対して答える気力は残されていなかった。
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