2−4
――月が昇る、夜が来る――
少年は寝床の中で寒々と思った。
部屋の中は、先程とうって変わって、真っ青に染まっていた。 いやしかし、この色がこの世界の本来の色なのかも知れない。 日が昇り、大地が光につつまれ染め抜かれる、その光は、光彩は、温度は、永遠の物だと思っていた。信じて疑うことはなかった。しかし、それは零細な一個の太陽が全てなさしめた偉業であり、僥倖であり、奇跡であった。・・・この宇宙では闇の方が遙かに多いことを思い知らされた。 全く予想外のことだった。その唐突さにうろたえ、逃げ、わずかな陽光にすがろうとした。だが、それでも夜の訪れは止められない。なぜなら、それがこの星の本来だから…。 答えのない問いが脳裏を廻る。『明日からどうすればいい?自分はどうなる?』 胸の膨張が熱を失って急速にしぼんでいくようである。この空洞を、何かで埋めたい気がして、無心で食べた。しかし、胃の方が先に逼迫して、もう食物には堪えられそうにない。今は、息をするのも苦しい。情けなくて泣きたくなる。
月が皓々と胸元を照らす。その色は冷たく容赦がない。彼の寝台は窓側にあった。気を利かしてくれたものだろうか、逆にそれが胸に切ない。今は月を見るのも辛い。いや、むしろ恐ろしくて見られない。 その思いを知らず、優しい旅人は隣で静かに寝息を立てていた。彼も、だいぶん疲れていたのだろう。少年の胸臆とは裏腹に、その顔は安らかである。イウギはふと孤独を感じた。急いで布団を顔まで手繰り寄せる。
闇から逃げようとして、またあれこれ思索し始めた。しかし、そのどれも、今の自分を救える考えではなかった。 それと同時に、一つの思いが水面を浮き沈みする。だが、彼はあえてそれを後回しにしていた。それは、何時かはしなければならないこと。自分の村の確認である。 行動を起こすには、余りにも恐ろしく、かといって希望を棄てきれもしない。漆黒の瞳が大きく瞬いた。 …自分の村は本当に滅んだのだろうか?
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