17−1
遠い過去と入り交じる、近い夢…。 「いくな」「いくな」と彼が泣いている。
いかないで…置いてかないで…ひとりに、しないで…
そのこぼれる涙を止(とど)める方法を自分は持たない…。すべては自分が元凶だというのに。
「どうしてだ」「置いていくな!」「独りになったら…俺はどうすればいいんだ」
彼は怒った振りをして哭いている。それが彼の泣き方なのだ…。すこし、あの子にも似ているようだ。
にいさま…
差しのべてくる手を、自分は握れる限りの数、握ってきた。その白い手は、いつだって小さくて、孤独と恐怖に震えていた・・・ でも、もう会うことは叶わない。自分は、それを望んではならない。
小さな足が、はたはたと廊下を駆ける音を聴くことももう無い。 部屋の扉を、開けてやることももうできない。
こぼれ続ける涙・・・
自分はそれを止める術を、もう知らない。
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