15−14
「まさか・・・!成長が早すぎる!!」 先ほどまでは、たしかに2m程だった種の体が、今はその3倍にまで膨れあがっている。透明な膜は、七色の光を帯び、いましもはち切れそうであった。狭い胞(ふくろ)の中に収まっていた足が、次々と生え、膜を蹴破って不気味に踊っていた。 「セツさん!!出来るだけ部屋の端へ!固く目を閉じて、絶対に開けないでください!!」 そう言って、セイルは二人と主の間に立ちはだかり、その懐へと飛び込んだ。セツはセツで、子供を抱えたまま走り出し、岩の隅に張りついて固く目を閉じた。しかし、子供の方は薄く開けた瞳と意識で、一部始終を見ていた。 青年が、再び剣先を岩場にこすりつけて円を描く。すると、炎はつかもとにまで及んで燃えた。青白い炎は、今までにないほど冷酷な色を放ち、見る者の目をつぶす。地獄の獄炎で生を受けたはずの種は、しかしそのあまりの温度に奇声を上げた。青年は、激しく燃えたぎる星色の炎を、容赦なく本体内部にまで突き刺した。途端に肉塊は燃え上がり、周囲の空気を爆発的に膨張させた。
高く、高く、青い炎は天へと立ち上った。その様子を、村の人々は自分たちの家から見ていた。そして、悪夢の終わりを知った。 青い炎は一晩中、衰えることなく燃え続け、日昇とともにいつの間にか消ていた。
前へ 次へ
|
|