15−2

  すっかり家の中が暗くなるまで、若者は深く考え込んでいた。焚き火に薪を足さないものだから、その火もすっかり消えている。
 後悔しようもないのだが、彼は普段とはまた別の罪の意識に囚われていた。そしてまた、少しの未来も見えていた。すべてはあの子供の言葉の所為だ。
 そんな彼の思考は、急な来客の足音でうち切られた。戸の外で焦った人の声がする。
「あの、すみません。イウギさん、こちらにお邪魔していませんか?」
よろよろと、長座りでこわばった足を引きずりながら、狭い扉を開けると、そこには困った顔の旅人の姿があった。
「あんた・・・。いや、あの子供はずいぶん前に帰ったぞ。戻っていないのか?」
「ええ…」
旅人のうろたえた様子に、セツも顔の表情を難しくする。
「だから、いったんだ・・・目を離すな、と。」
いや、俺が村の外まで見送ってやっていれば。喧嘩なんてするんじゃなかった。そんな苦い思いも湧いてきて、セツの表情はますます固くなる。
「すみません、本当に・・・。ですが、セツさんにも協力して欲しいんです。」
 急に青年の若者を見つめる瞳が強くなる。セツは身をすくませた。
「まさか…あんたまで、俺に失踪の時のことを説明しろっていうんじゃないだろうな。4年間散々問われても答えられなかったことなんだ。俺だって必死に考えた。だけど答えなんてでてきた試しはな無かったんだ!」
無理だ、と言いかける若者の目を深い藍の瞳が再び見つめる。セツは何かに射られたように決意を固めた。いや、そうせざるを得なかった。
「…不思議だな。あんたの目を見ていると、あの日の夜の色を思い出す。俺自身はとっとと忘れてしまいたいような出来事なのに。あんたの色は、それを許さないんだな。」
「・・・辛いことを思い出させてしまって、すいません。でも、私には貴方の協力が必要なんです。思い出してください。貴方が4年前、どこに向かっていたのかを。イウギさんもそこにいるはずなんです!」
「俺は・・・村のはずれの、『吸血鬼の墓場』にいたんだ。ここより街道を大分戻ったところの…」
「そこまで案内してください!」
「あ、ああ…」
そういって、雪道用の杖を探そうとする彼に、セルイは謂った。
「まずは、その足を治す必要がありますね。」


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