12−14

 すっかり満腹になった一行は、今夜のハイライトを見ようと表へ出た。町の中心へ向かう路にはすっかり雪が降り積もっており、何もない真っ暗な空から降る雪は、町の灯りの中でキラキラと光ってまるで星のようである。イウギはほう、と溜息をついた。
 世の中にはたくさんの人がおり、たくさんの出会いがあるんだとこの旅で知った。そして、別れが近づいていることも…本当は知っていた。だから、今はとても楽しいけれど、必ずどこかが寂しい。このたくさんの降りしきる星の中、自分だけの星を探すことは、いかにも大変だなとイウギは感じた。
 町の中心部にたどり着くと、祭礼は今しも始まろうとしていた。厳かに町の鐘が鳴り響き、大きな星を戴いたポールを掲げ、神父とそのおつき二人がしずしずとモニュメントに歩み寄る。その光景を、イウギはデジャヴュで見た気がした。三神者の後ろには、今年の最大の収穫=金鉱が、四脚の方形な板に載せられて御輿のように男達に運ばれている。さらにその後を、折々の格好をした子供達が蝋燭を携え、二列になって歩いていた。町の両脇で男女の聖歌隊が賛歌を歌っている。町の大人達はそれを静かに見守っていた。列が星のモニュメントのまわりを一回りした格好になった頃、子供達の中からあの女の子が飛び出してきて、イウギの手を取った。
「ちゃんと来てくれたのね!さ、一緒に祭列に参加しましょう?」
引っ張って行かれようとするイウギを、ふとセルイが引き留めた。
「あ、イウギさん!祭典から戻ってくるまでに考えておいて欲しいことがあるんですけど…」
「え…ん、なに?」
「この町で、暮らしたいと思いますか?」
「え?それはどういう意…」
セルイの答えを聞く前に、イウギは女の子によって引っ張って行かれた。青年二人の姿が遠ざかる。
 祭列はそのまま町の中をぐるりと巡った。神父達が町の辻で一回一回お辞儀をし、町の人々は戸口の所まで出て、その姿を拝んだ。
 子供達は子供達で、手持ちの火を町の人たちが差し出す蝋燭に移すので忙しかった。イウギは手ぶらだったから、何故かマーシャと手を組んだまま、一緒に蝋燭の火を分けてまわった。
「まー可愛い御使いさん、」そういって、お菓子をもらえることもあったがしかし、その間もイウギが考えていたことは、セルイの先程の言葉の意味だった。暮らしたいと思うかだって?どうしてそんなことを訊くんだろう。自分たちの旅はまだ始まったばっかりなのに…。
 言いしれぬ不安と予感が働いたが、イウギは敢えてそれらを直視しないようにした。信じたく、無かったからだ。
「さっきからどうして黙っているの?もうすぐ、お祭り終わっちゃうよ…?そしたらお別れになっちゃうのかな。」
寂しそうな声で、彼女が言った。イウギには答えることが出来ない。星のモニュメントはもうそこまで迫っている。それを見上げると、やはり雪の粉はしんしんと降りしきっており、イウギは涙を一粒こぼした。


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