Aー1

 それは、1000年以上も前の出来事である。
ある男が、荒涼たる大地に放逐されていた。彼は、罪人であった。
しかし、罪を犯したのは彼ではない。彼の友人である。村の、神聖なる山羊が一頭、盗まれ骨となって発見された。
 やったのは友人である。友人に裁きの手が及びそうになったとき、彼は自らがやったのだと名乗り出た。
 友人には幼き家族があった。
男は、名をサム、といった。善良なるサムは「嘘」という罪を着て、悪魔が住むという死の大地に追放となった。
後悔はなかった。うまくすれば、生き延びられると思っていた。悪魔など、伝説だろうと…
 しかし、死の大地の寒冷はすさまじく、ぼろを纏った彼の体は見る見るうちにこわばっていった。息をすると、肺に氷が突き刺さり、強風が顔や全身に雹をたたきつけた。
視覚はほとんどその機能を果たしていない。むしろ、不快な刺激を脳に与えるだけである。
聴覚だけが、はっきりとしていた。槍のような風が横を通りすぎるとき、ケタケタと笑う声がした。
「この、悪魔め。」
 男は、嘲笑と自嘲の中で倒れ込み、息を引き取ろうとしていた。


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